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管理会計とキャッシュフロー(CF)のエッセンスをマスターする事

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管理会計

1.最適な「販売価格」の決め方

2.直接原価計算の目的

3.CVP分析について

4.差異分析の方法

5.設備投資の意思決定

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​キャッシュフロー

6.なぜキャッシュフロー(CF)が重要なのか

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1.最適な「販売価格」の決め方

現在の見積り売価の方法で会社に利益がでるのかを財務が正しく判断する為には、そもそも販売価格の決め方の基本を知っておく必要があると思います。販売価格の基本的な計算方法は以下の2つです。

・販売価格 = 原価(仕入れ値) ÷ 原価率

・販売価格 = 原価(仕入れ値) ÷ (1-予定利益率)

ここでいう原価とは、製造原価とそれ以外の販売費、一般管理費、営業費等をを含みます。

販売価格の考え方は、会社やその業界により様々です。

・コストプラス法 (小売り、卸売りではマークアップ法) --- 原価(仕入れ値)を基準に計算する方法で、「販売価格 = 原価+予定利益」或いは、「販売価格 = (原価+販促費+人件費)+予定利益」で販売価格を計算

市場価格追随法 --- 競合製品や類似サービスなどを基準にして販売価格を決定する方法

・商品のライフサイクルに合わせて変動させる方法 --- 商品がで始めた頃は低価格で提供し、後に上げるなど

・需要で決める方法 --- ユーザーが商品にいくらのお金を出すかを想定して決める方法

・他の自社商品と抱合わせする方法 --- 目玉商品を低価格で設定し、他の商品で利益を稼ぐといった価格設定

・名声価格法 --- 化粧品や高級商材など高級感を出す為に、敢えて高価格帯で価格設定

見積原価について

混乱を避けるために標準原価との違いを予め、確認しておくと、標準原価は実際に発生した原価と差異を比較し、その原因を分析する事で将来的な改善に繋げるという役割を持ちます。一方、見積原価は見積価格算定の基礎なるもので、利益確保の為に重要な役割を果たします。

見積原価の計算方法

見積原価算出の方法は次の3つの方法があります。

・経験見積法:ベテランの経験と判断で原価を算出

・比較見積法:類似品の原価をベースに、仕様差などを比較して算出

・概算見積法(コストテーブル法):コストテーブルを使い、個々の部品毎に材料費や加工費を積み上げて算出

見積原価のメリット・デメリット

見積原価のメリットは、管理が簡単に行えるため事務にかかる時間や経費を節約できる処です。一方で、デメリットは、前提となる消費量で大きく変動する点や、直接材料費・間接材料費の区別がされず、後で見積り方法が正しかったかを検証する事が難しい点です。これらの点を踏まえ、原価見積り時には、以下の点を心掛けます。

1. 見積原価を算出する範囲(要素)を明確に

見積原価を算出する際は、全体の原価を出す必要があります。材料費や直接加工費、間接費など、出すべき原価を明らかにし、漏れがないようにチェックする。

2. 見積原価はできるだけ正確に算出

不確定要素もあるが、見積原価を出す際は様々な点を考慮し、精度を上げる。例えば、コストテーブルを使用して、見積り価格と実際価格とのズレを管理する

3. 販売目標を管理する

減価償却費や人件費などの固定費は、販売個数とは無関係に掛かる費用を指す。商品1個当たりの固定費は、販売個数が多くなるほど低くなるため、販売目標が曖昧だと見積原価と実際の原価にズレが生じてしまうので、根拠のある数字をベースに販売目標を定める必要がある。

値引き交渉に対する考え方

「通常の販売価格より安い価格で売って欲しいと言われた時、引き合いを受けるのか断るのか」この意思決定は非常に重要になります。財務スタッフが数値として押さえるポイントは、追加受注では限界利益がプラスになるかという処です。これは言い換えると、固定費が回収できるのかどうかとも言えます。

又、前提条件として、生産設備の余力が有るか(生産ラインが余っているのか?)、何が機会原価であり埋没コストであるかを把握する事も大切になってきます。ここでは3つのケースを使って、主に差額法により意思決定の考え方を具体的に紹介します。

(ダウンロードするエクセルファイルを添付しています)

2.直接原価計算の目的

全部原価計算のP/Lは外部公表用で、一方、直接原価計算のP/Lは管理会計目的として使用されます。

 

全部原価計算では営業利益は「売上高 - 売上原価 - 販管費 = 営業利益」で計算します。

売上原価は、製造間接費を変動費と固定費に分けずに数量を基準に、販売分(売上原価と売れ残り(月末仕掛品)

に配分して計算します。

一方、直接原価計算では営業利益は「売上高 - 変動費 - 固定費 = 営業利益」で計算します。

製造間接費を変動費と固定費に分け、変動費は数量を基準に販売分(売上原価)と売れ残り(月末製品)に配分されますが、当月発生分の固定費は、全額当月の費用になります。

その結果、全部原価計算のP/Lと、直接原価計算のP/Lでは営業利益で差が出てしまうので、直接原価計算のP/Lから全部原価計算のP/Lへ組替える際は、固定費調整という項目を入れて調整する必要が出て来ます。

直接原価計算の目的

・利益計画で利用されるCVP分析では、変動費と固定費に分類される直接原価計算のP/Lが使用される

・売上高に関わらず毎月発生する固定費を当月コストへ含める事で、工程の効率化などの管理がしやすい

・月末在庫(毎月の生産高)が大きく増減するケースでは、売上高に関連付けられた利益が表示される

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3.損益分岐点分析(CVP分析)について

損益分岐点分析(CVP分析)は、財務分析における代表的な指標の1つです。

損益分岐点とは、売上高と費用の額がちょうど等しくなる「売上高」または「販売数量」をいいます。言いかえれば、「営業利益がゼロになる売上高や販売数量」ということです。損益分岐点は、一般的に以下のような分析図で示されます。

                                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ダウンロードするエクセルファイルを添付しています) 

直接原価計算のP/Lで重要な概念となる限界利益の定義は、以下の通りです。

損益分岐点を計算する式は、以下のように求められます。

利益=売上高-変動費-固定費(式1)

変動費率=変動費÷売上高 → 変動費=売上高×変動費率(式2)

式2を式1に組み込むと、利益=売上高-売上高×変動費率-固定費=売上高 (1-変動費) -固定費(式3)

損益分岐点売上高では、利益がゼロになるなので、前述の式の利益を0に置き換えると

0=損益分岐点売上高(1-変動費率)-固定費 → 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1-変動費率)(式4)

ここで、限界利益の計算式;売上高-変動費 = 限界利益であるので、変動費率 + 限界利益率 = 1

→ 限界利益率 = 1-変動費率(式5)

式5を式4に組み込むと、損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

↓↓↓この式を直接原価計算のP/L(エクセル)で損益分岐点売上高を表示するセルに入れる

                

 (ダウンロードするエクセルファイルを添付しています)

CVP分析(Cost Volume Profit analysis) 

C: 費用、V: 経営活動量(売上等)、P: 利益、これら3つの関係を明らかにして、短期利益計画を作成する分析方法です。例えば、ある一定の利益を獲得する為の売上高を計算式は、上記(式4)より以下の様に求められます。

目標営業利益=目標営業利益を達成する売上高 (1-変動費率) -固定費

 → 目標営業利益を達成する売上高 = (目標営業利益 +固定費) ÷ (1-変動費率)

 → 目標営業利益を達成する売上高 = (目標営業利益 +固定費) ÷ 限界利益率

↓↓↓直接原価計算のP/L(エクセル)で目標営業利益を達成する売上高を表示するセルに入れる

                

 

 

 

 

 

 

(ダウンロードするエクセルファイルを添付しています)

更に、事前に想定された変動費単価と固定費をベースに、売上高(販売数量)の変動に応じて稼ぎ出される営業利益を予測することができます。

営業利益 = 販売数量 × 販売単価-販売数量 × 変動費単価-固定費

これにより、営業利益を予測するには、考慮すべき変数として、①販売数量 ②販売単価 ③変動費単価 ④固定費の4つが考えられます。ゴールシークやソルバーの機能を利用し、分析資料を作成していきます。(ダウンロードするエクセルファイルを添付しています)

 

4. 見積原価と実際原価の差異分析

原価の内訳は、直接材料費、直接労務費、製造間接費に分けられますが、ここでは製造間接費の差異分析に付いて解説します→予算差異、能率差異、操業度差異に分けて分析

【例題】

 

 

 

予算差異:予算許容額と実際発生額の差異

→予算許容額(実際操業度における変動費+固定費予算額)-実際発生額

能率差異:変動費と固定費についての標準操業度と実際操業度の差

→標準操業度における変動費+固定費-実際操業度における変動費+固定費

操業度差異:生産量に関係なく発生する固定費に関する差異のうち実際操業度との差異

→実際操業度における固定費-基準操業度における固定費(固定費予算額)

​実際の差異分析の計算は下記のようになります。

予算差異:(変動費率@400円✕実際操業度1,600時間+基準操業度における固定費360,000円)-実際発生額800,000円=+200,000円(有利差異)

能率差異:(変動費率@400円+固定費率@200円)✕(標準操業度1,400時間-実際操業度1,600時間)=△120,000円(不利差異)

操業度差異:固定費率@200円✕実際操業度1,600時間-基準操業度における固定費360,000円=△40,000(不利差異)

5.設備投資の意思決定(NPVとIRR)

正味現在価値(NPV)法

投資により将来発生するキャッシュフローの現在価値から、初期投資額を引いた差額により投資の意思決定を行う方法です。式は、NPV(正味現在価値)= 投資によるキャッシュフローの現在価値 - 初期投資額となります。

投資判断を行う際、NPVがプラスなら投資すべきで、マイナスなら投資すべきではない事になります。

内部収益率(IRR)

NPVがゼロとなる割引率がいくらかを求め、その割引率が収益率のハードルレート(投資を行う上で最低限必要とされる利回り)より大きいかどうかを検証する方法です。

投資判断としては、IRR > ハードルレートならば投資すべき、IRR < ハードルレートならば投資すべきではありません。

 

更に例題として、DCF法による設備投資の判断を行ったエクセル資料を添付しています。

6. なぜキャッシュフロー(CF)が大切なのか

従来から、企業の経営状況の把握は、損益計算書で行なうものとされてきました。それは、損益計算書で企業の利益が計算されているためですが、損益計算書は、利益の発生時点でその金額が計上されるので、実際のキャッシュの流れとは乖離が生じます。

たとえ、売上が順調に伸びても、売掛金の回収が大幅に滞れば、運転資金が膨らみ、手元資金が少なくなります。そんな時、売掛金を回収する前に買掛金の支払いが必要になると、手元にキャッシュが足りずに支払いができなくなり、会計上は黒字でありながら会社が倒産してしまう(黒字倒産)事態を招いてしまうかもしれません。

キャッシュフローの管理

キャッシュフローを管理して行く為には、「資金繰り表」と「資金繰り予測表」を作成する事になります。サンプルとして、「資金繰り表_日繰り」「資金繰り表_銀行別日繰り」「月別資金繰り表(予測表)」を添付します。

只、財務スタッフは、以下のような点に留意して資金繰りを管理する必要があります。

・標準テンプレートの資金繰り予測表を会社に合わせた内容に修正して利用する

・当月だけではなく、確定していない3~6か月先の資金繰りを予測する (予測する為の"物差し"を持つ)

・翌月以降で確定していない予測の数字を使う際、根拠を明らかにして資料を作る 

・日繰りと月別の資金繰り表の整合性を合わせる (集計の項目を合わせる)

キャッシュフローの改善

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は、仕入から販売までに伴う現金回収までの日数を表し、代表的な経営指標の1つとなります。例えば、小売業や卸売業であれば商品の仕入を行ない、製造業や飲食業であれば原材料から製品等を製造し、一定期間をかけて店舗等で販売し、その後、顧客より代金を回収します。

CCCは「仕入→支払→販売→入金」という一連の現金循環のサイクルにおける各過程の回転日数に基づいて、運転資金を調達すべき期間を求めたものです。

計算式は「CCC =売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-買入債務回転日数」となり、CCCが短いほど資金繰りが良い事を示します。

・売上債権回転日数 = 売上債権平均残高 ÷ (年間売上高÷365日)

・棚卸資産回転日数 =棚卸資産平均残高 ÷ (年間売上原価÷365日)

・支払債務回転日数 =支払債務平均残高 ÷ (年間売上原価÷365日)

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を短縮する方法

具体的な取り組みとして、以下の3つが挙げられます。

・売掛金回転日数を短くする(売掛金削減、取引条件の見直し)

・在庫日数を短くする (在庫削減)

・買掛債務日数を長くする(取引条件を緩和)

これらの項目を月次のマネジメント指標で管理する為に、具体的な目標設定を行っていきます。

・顧客と売掛金の決済条件を短縮する交渉を行い、回収遅延をAging Reportで顧客ごとにチェックする

・在庫(原材料、購入品、製品在庫等)回転日数を月次単位で計算する

キャッシュフロー分岐点売上高

キャッシュフロー分岐点売上高は、事業継続に必要な最低限の売上高を示したものです。損益分岐点売上高が利益をゼロとして計算するものに対し、キャッシュフロー分岐点売上高は、借入金の返済額などを含めた収支をゼロとします。キャッシュフロー分岐点売上高 = (固定費-減価償却費+借入金返済額)÷限界利益率

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